研究概要 |
太陽光が天然水に照射すると、スーパーオキシド陰イオン、OHラジカル、過酸化水素、有機過酸化物等の活性酸素種が発生する。このうち過酸化水素は最終反応生成物であり、p-ヒドロキシフェニル酢酸のペルオキシダーゼ存在下での2量化反応により測定してきた。本年度の成果として、瀬戸内海海水における有機過酸化物の測定結果を発表した。これは上記の方法で試料にカタラーゼを500unit及び50000unit添加してその差から有機過酸化物量を見積もるもので、100〜300nMの濃度であった。一方スーパーオキシド陰イオンやOHラジカルは、不安定かつ短寿命であるため、その測定法の確立が必要である。さらに活性酸素生成反応の初期には、溶存有機物(例えばフミン酸)が光励起され水和電子が放出される過程が存在するとされる。こうした過程を含めて、天然水中で進行する光反応素過程を明らかにすることを目的とした。測定法の開発として本年度行ったのは、スーパーオキシド陰イオンである。この方法は、チタン(IV)-ポルフィリン錯体(Oxo{5,10,15,20-tetra(4-pyridyl)porphyrinato}titanium(IV))が硫酸酸性(濃度:1M)下で過酸化水素と結合して450nmに吸収を与えることを利用するものである。試料にスーパーオキシドディスムターゼ(300unit/mL)を添加したもの及び無添加の試料との差を取ることにより定量するもので、実験室レベルでの光照射実験からは、0.1μMのスーパーオキシド陰イオンが十分測定できる。実際の海水(天然水)に試すのは今後の課題であるが、沿岸海水についてスーパーオキシド陰イオンの反応生成物である過酸化水素が、最大400nM以上発生することから考えて、本法は現場測定に十分対応できるものであると考える。
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