これまでに単離してきたイネのgypsy型レトロトランスポゾンRIRE2、RIRE3、RIRE8の逆転写酵素遺伝子の塩基配列を基にdegenerate primerを作成し、被子植物(単子葉類・双子葉類)・裸子植物(針葉樹類・イチョウ類)・シダ類・コケ類・藻類のゲノムDNAからgypsy型レトロトランスポゾンを単離・同定した。系統樹を作成した結果、植物のgypsy型レトロトランスポゾンは、RIRE2とRIRE3をそれぞれ代表とする二つのファミリーに大別され、さらに、その中にいくつかのサブファミリーが存在すること、各サブファミリー内では、単子葉類、双子葉類、裸子植物、シダ類を含む各生物種由来のレトロトランスポゾンがクラスターを形成すること、そして、各クラスターに属するレトロトランスポゾンは、LTRの長短と末端配列、PBS配列の種類、特定のorfやpol遺伝子下流領域の有無など、それぞれ特徴的な遺伝子構成を持つこと等が明らかになった。これらの事実は、各ファミリーに属するレトロトランスポゾンが、互いに干渉しあわず、垂直伝播によって進化したことを示唆するものである。 イネのgypsy型レトロトランスポゾンの一種、RIRE7は、155bpを基本単位とする新規縦列型反復配列(TrsDと命名)に高頻度で挿入されていることが分かった。TrsD及びRIRE7をプローブとして、イネの体細胞中期染色体および減数分裂細胞のパキテン期染色体を用いてFISHを行ったところ、TrsDおよびRIRE7は染色体の動原体付近、すなわちぺりセントロメアのヘテロクロマチン領域に局在することが分かった。このことは、RIRE7がイネの動原体領城を構成していることを示す。RIRE7はイネ科植物の動原体配列として同定された様々な配列と相同性を示すことから、RIRE7およびそのファミリーが、多くの植物種の動原体領域に局在しその構成成分となっていると考えられる。
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