メガサテライトDNAの進化

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12640603
• 研究機関: 理化学研究所
• 研究代表者: 権藤 洋一 理化学研究所, マウス変異開発研究チーム, チームリーダー(研究職) (40225678)
• キーワード: タンデム反復配列 / サテライトDNA / ゲノム構造 / 協調進化 / 哺乳動物 / トランスジェニックマウス / 遺伝子マッピング / ゲノム;不安定性

研究概要

ヒト4番染色体短腕4p15に発見されたRS447は、4.7kbをユニットとするタンデム反復配列である。これまで調べたすべての哺乳動物で配列そのものが保存されており、また、タンデム構造も2種を省いて確認でき、メガサテライトDNAと呼んでいる。ヒトのタンデムコピー数は19〜97コピーと極めて多型に富み、またコピー数の変動が親子間伝達において10%以上という極めてダイナミックなゲノム構造であることを示した。反復配列はジャンクDNAとみなされるケースが多いが、RS447は種間でよく保存されているうえに、単位長内に1590bpのORF配列があり、実際に活性をもつ脱ユビキチン化酵素をコードしている。本研究では、ヒトとげっ歯類を中心とする哺乳動物種において、1)DNA配列比較による、種内の協調進化と種間の放散進化の解析より、種内コピー間の相同性がいずれも99%以上と最も高くつぎには、ヒト-マウス間のORF領域が高かった。これは、種内における協調進化を示すと共に、種間における放散進化によって、配列どころかタンデムコピー構造そのものも変化したことを示している。
2)FISHやsomatic cell hybridなどのマッピング比較による染色体レベルの解析結果からは、ラットにおいて予想通りゲノム染色体の一ケ所にRS447相同配列が存在することが示され、すでに国立がんセンターとの共同研究で大番染色体に存在するという結果と合わせ、ラットゲノム上のマッピングが確定した。さらに、ヒトRS447を52コピーほど導入したトランスジェニックマウスにおいてホモ接合体がメンデルの法則から期待されるとおりに得られていない。この結果は、マウスにおいてRS447相同遺伝子は存在しながらタンデムコピー構造が進化の過程で失われたことを解明する鍵となる可能性がある。

研究成果

• [文献書誌] N.Matsuyama,S.Hadano,K.Onoe,H.Osuga,J.Showguchi-Miyata,Y.Gondo,J.E.Ikeda: "Identification and characterization of the miniature pig Hungtinton's disease gene homolog : evidence for conservation and polymorphism in the CAG triplet repeat"Genomics.. 69(1). 72-85 (2000)
• [文献書誌] Y.Saitoh,N.Miyamoto,T.Okada,Y.Gondo,J.Showguchi-Miyata,S.Hadano,J.-E.Ikeda: "The RS447 human megasatellite tandem repetitive encodes a novel deubiquitinating enzyme with a functional promoter."Genomics.. 67(3). 291-300 (2000)
• [文献書誌] K.Ise,K.Nakamura,K.Nakao,S.Shimizu,H.Harada,T.Ichise,J.Miyoshi,Y.Gondo,I.Ishikawa,A.Arba: "Targeted deletion of the H-ras gene decreases tumor formation in mouse skin carcinogenesis."Oncogene.. 19(26). 2951-2956 (2000)
• [文献書誌] H.Murai,S.Takeuchi,Y.Nakatsu,M.Ichikawa,M.Yeshino,Y.Gondo,M.Katsuki,K.Tanaka: "Studies of in vivo mutations in rpsL transgene in UVB-irratiated epidermis of XPA-deficient mice."Mutat Res.. 450(1-2). 181-192 (2000)
• [文献書誌] Y.Shioyama,Y.Gondo,K.Nakao,M.Katsuki: "Different mutation frequencies and spectra among organs by N-methyl-N-nitrosourea in rpsL (strA) transgenic mice."Jpn J Cancer Res.. 91(5). 482-491 (2000)
• [文献書誌] S.Nakamura,H.Ikehata,J.Komura,Y.Hosoi,H.Inoue,Y.Gondo,K.Yamamoto,Y.Ichimasa,T.Ono: "Radiation-induced mutations in the spleen and brain of lacI transgenic mice."Int J Radiat Biol.. 76(3). 431-440 (2000)
• [文献書誌] S.Sunahara,K.Nakamura,K.Nakao,Y.Gondo,Y.Nagata,M.katsuki: "The oocyte-specific methylated region of the U2afbp-rs/U2afl-rsl gene is dispensable for its imprinted methylation."Biochem Biophys Res Commun.. 268(2). 590-595 (2000)