卵や種子生産における大きさと数のトレードオフに関する理論的解析の多くは、卵や種子を一斉に生産することを仮定している。しかし、たとえばトンボのように、卵を少しずつ産んでいく動物も多い。また、花序を着ける植物で、開花時期にずれがある場合も、種子は順次に生産されることになる。本研究では、卵や種子を順次に生産するとき、大きさと数のトレードオフはどのようなものになるのかを解析した。また卵(種子)の定着総数が最大となる最適な卵(種子)の大きさも解析した。 【仮定】親は、一定の貯蔵資源を使ってN個のコホートを生産する。貯蔵資源は、維持呼吸のため時間とともに目減りする。i番目のコホートはn(i)個の卵からなる。そして、時間t_s(i)に発生を開始し、時間t_c(i)に発生を完了する(発生時間t_c(i)-t_s(i)が長いほど卵は大きい)。卵の定着率は、卵の大きさのS字型の増加関数である。各コホートの卵数n(i)と発生開始時間t_c(i)は制約として決まっており、各コホートの発生完了時間t_c(i)とコホート数Nは戦略として変化するとする。 【予測】トレードオフ:卵一つあたりの生産コストは、後期のコホートの卵ほど大きい。つまり、同じ大きさの卵を作るためには、後期のコホートの卵ほど費用がかかる。これは、後期のコホートのために資源をとっておくと、維持呼吸による資源の目減りの度合いが大きくなるからである。 最適な卵の大きさ:最適な卵の大きさは、後期のコホートのものほど小さくなる。そして、単位体積あたりの維持呼吸速度が大きいほど、最適な卵の大きさは後期のコホートでより小さくなる。
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