研究概要 |
土壌のリン濃度がVA菌根菌のバイオマスにどのように影響するかを調べるために,ポット実験を行った。栽培ポットに滅菌した川砂を入れ,砂1kgあたり0,0.1,1,5,10mgPになるようにNaH_2PO_4溶液を加え、その半数に菌根菌Gigaspora margaritaを接種した。これらのポットに宿主植物のヤハズソウKummerowia striataを植付け,人工気象機内で60日間栽培したのち,植物体重と菌根菌バイオマスの定量を行った。菌根菌バイオマスについては,Fujiyoshi et al.(2000)の方法により,根および砂の中のエルゴステロール量を定量し,その値から変換係数を用いて,根内外のVA菌根菌バイオマスに換算した。植物体重,植物体のリン濃度は,菌根菌接種により有意に増加した。リン濃度5および10mgP kg^<-1>では,根内の菌根菌バイオマスの顕著な低下が認められたが,根外の菌根菌バイオマスにはリン濃度による有意な差は認められなかった。根外の菌糸を含む全菌根菌バイオマスは根の重量の34〜42%を占めると推定された。 河畔に生育するヤナギ類について,野外における菌根の形成状況とポット実験による菌根の影響の評価を行った。広島県太田川中流域の調査地に生育するネコヤナギSalix gracilistyla,アカメヤナギS.chaenomeloides,タチヤナギS.subfragilisについて,菌根の形成状況を調査したところ,いずれの種についても,VA菌根と外生菌根の形成が認められた。しかし,VA菌根の感染率は低く,ポット実験でもVA菌根菌の接種による有意な成長促進は認められなかった。これらの結果から,これらのヤナギ類については,VA菌根の役割は小さいものと推測された。
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