研究概要 |
ボルネオ島,スマトラ島およびマレー半島の6カ所において,国立公園内の熱帯雨林およびその周辺の二次林において,アリ植物マカランガ14種の個体毎に植物,共生アリ,共生カイガラムシおよび特殊化した植食性昆虫(チョウ,タマバエなど)をそれぞれ採集した.サンプルの収集は,複数の協力者によって行われた. まず,アリ植物マカランガについては,核DNA上のITS領域の塩基配列と形態解析の組合せによって従来よりも解像度の高い系統樹が得られた(Davies et al.submitted).これを共生アリ(47コロニー)のmtDNA,COI遺伝子による分子系統樹とつきあわせたところ,従来得られていたよりも強い関連性が両系統樹の間に認められ,両者が共種分化してきたことがより強く支持された(Itino et al.submitted). 一方,共生アリのサンプル数を増やして解析したところ,従来知られていたようなマカランガに対して種特異性の高いアリの系統とは別に,さまざまなマカランガ種と共生しうるジェネラリストのアリ種が,特に二次林に多く存在することが判明した. 共生カイガラムシについてはPCRプライマーをmtDNA上に設定すべく,さまざまな昆虫について増幅可能なプライマーを使って多数試みたが,カイガラムシのmtDNAの構造上の特異性から(深津,私信)ことごとく失敗した.しかし,現在やっと16SrRNAの一部(約400bp)を増幅することに成功したので,今後すでに集まっている約150サンプルについて順次配列決定をおこなっていく予定である.最後に植食性昆虫についてはサンプリングが思うようにすすんでいないため,次年度,集中的にサンプル採集をおこなう.
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