(1)ゲノムレベルの組換えが種間競争の結果に及ぼす効果 ゲノムレベルの組換えが同一の資源を利用する個体群(系統)間の競争の結果に及ぼす効果を明らかにすることを目的に、細菌を用いた長期培養実験を行った。実験には、B. subtilisとE. coli (F^-)の系、B. subtilisとE. coli (Hfr)の系、B. subtilisとE. coli (F^-)×E. coli (Hfr)の系(組換えあり)を設け、それぞれを長期培養し、数の変化を調べた。実験の結果、ゲノムレベルの組換えは遺伝的多様性を創出する為その個体群は進化的時間での競争に有利であることが示唆された。 (2)資源-消費者-二次消費者からなる実験群集における細菌個体群の進化過程の実験的解析 資源としてグルコース、消費者として大腸菌(E. coli)、二次消費者としてテトラヒメナ(Tetrahymena pyriformis)を用いたケモスタツト培養系を、それぞれ2つの複製系を設け、約220日間培養した。大腸菌として、F^<-->株、Hfr株、及びF^-/Hfr混合株(両株の間に染色体レベルの組換えが生じる)を用いた合計3つの実験系を設けた。いずれの系においても大腸菌個体群中に捕食者に食われにくい長鎖型の変異が出現し正常型と共存していた。また、組換えの生じる系では、対象系に比べ捕食者個体群の数は大きく振動し、システム全体が不安定になることが見出された。この結果は、被食者の生態的性質がシステムを不安定にするようなパラメータ空間へ進化したことを示唆した。 (3)3種系マイクロコズムにおけるテトラヒメナとクロレラとの相互関係の解析 生産者としてChlorella vulgaris、分解者としてEscherichia coli、及び消費者としてT. thermophilaの3つの構成種からなるマイクロコズム系を作成し長期培養し(500日以上)、種間の相互作用を解析した。特に、T. thermophilaがその細胞内にC. vulgarisを取り込む現象を見出した。本研究では、これを細胞内共生の進化の初期段階を解析するための実験モデルとして用い、両者の相互作用を解析した。
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