研究概要 |
まず、1998年に行ったジュウイチの寄主であるコルリの繁殖生態についての調査結果をまとめ、公表した(論文2編)。ジュウイチの宿主であるルリビタキは、オスが3年かかって青い色彩になる(成熟羽)。しかし本調査地においては、全体の約50%が、褐色の非成熟羽のまま繁殖に参加することが可能である。この現象をDPM(delayed plumage maturation:遅れ羽衣成熟)というが、ルリビタキにおいて、このDPMが、なぜ生じるのか、またそれがジュウイチのとの托卵関係においてどう作用しているのかを解明することが、この研究の目的である。そこで、ルリビタキのジュウイチに対する対抗戦略に関して、主に繁殖に関わる諸特性についてデータを収集、(1)褐色オスと青色オスで、繁殖成功に関わる諸特性に、統計的な差異は見いだせなかった。(2)褐色オスと青色オスの巣で、ヒナの性比が操作されているという仮説については、サンプルサイズが少なく、検証できなかった、ことを明らかにした。 また、宿主特異的カッコウ類のジュウイチと比較する意味で、generalistのカッコウの宿主操作を、長野県野辺山高原においてモズに托卵するカッコウ個体群を研究した。その結果、(1)カッコウのヒナにおける羽色の二型について、ヨーロッパ集団とのいくつかの違いを発見、(2)カッコウのヒナがモズの一巣分のヒナの擬態を行っているかどうかを、給餌頻度から検証し、モズの巣においてはカッコウのヒナは、モズのヒナ1.4羽分の給餌を受けていることを明らかにした。 宿主操作における翼角の機能を検証するため野外においてビデオ観察および染色実験を行った.この結晃実験的操作によって翼角が見えなくすると宿主であるルリビタキの給餌頻度は下がる傾向が見られた.また,ビデオ観察によって実際に仮親が誤って翼角に給餌を試みるのを確認することができた.
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