現存する材料に基づいて過去の樹木個体群の構造と機能量の変化を推定する方法を26年生トドマツ人工林に適用し、実測地と推定された森林構造とを比べることによって、この方法の正確さを検証した。札幌市豊平区羊が丘実験林に設定されているトドマツ肥培試験林を対象として、平成12年10月に森林伐倒調査を行った。まず、無施肥区と連年施肥区のそれぞれにおいて、胸高直径、樹高、樹冠長などの個体サイズを測定した。次に各処理区でいろいろな大きさの個体約l0本を伐採し、それぞれの器官別現存量を測った。幹に沿って何枚か薄い円盤を採取し、辺材面積を求めた。伐採した木からは、樹幹解析用の幹円盤も採取し、幹体積とその成長量を推定した。平成13年10月には補足的な樹木サンプルを採取した後、前年度の試料とあわせて、それぞれの実験区ごとに器官別現存量、成長量などと個体サイズ間のアロメトリー関係を決定した。伐採木からはさらに窒素濃度測定用サンプルを採取し、乾燥・粉砕後、N-Cアナライザーを用いて窒素濃度を測定した。対象としている林分では個体ごとの胸高直径時系列データが存在するが、これと上で求めたアロメトリー関係をあわせて、毎木調査が行われた年の林分全体の器官別現存量、葉面積、それらの成長量などを推定した。毎木調査データが存在しない年については、0sawa et al.(2000)の方法を用いて過去の林分構造と林分全体の窒素集積量を推定した。この推定のために、樹体内窒素濃度と辺材体積の関係、年によって異なる辺材堆積と単木サイズの関係、および単木のサイズ分布などを同時に解析した。また、この研究の基礎になっている森林構造復元に関する理論の精度を検証し、このテーマで原著論文2編を出版した。
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