本研究では、強光(500μmolm^<-2>s^<-1>)と弱光(50μmolm^<-2>s^<-1>)、それぞれの光条件においてさらに二つの土壌水分条件を設け、Populus koreana x trichocarpa cv.Peaceを育て、光合成誘導反応の測定と解析を行った。光合成誘導反応の測定は、光強度50μmolm^<-2>s^<-1>に設定し、60分間で葉の光合成誘導状態を形成させた後、光強度を500μmolm^<-2>s^<-1>まで急激に上昇させ、光合成誘導反応を1秒の間隔で測定する。その結果、P.Koreana x trichocarpaは、光量子密度が変わっても気孔抵抗はほとんど変化を示さなかった。このことから、この植物の光合成誘導反応に対する制限はほとんど生化学系の活性化によるものであると考えられる。また、光合成誘導反応速度は弱光と比べ、強光条件下で生育したP.Koreana x trichocarpaの方が高いことがわかった。さらに、異なる水条件下で生育した葉の間には、光合成誘導反応速度に有意な違いがないことが示された。一方、室内の測定と比較するため、野外で光合成誘導反応の測定と解析も行なった。熱帯林林床植物であるShorea macrophyllaにおいては、気孔抵抗の変化が光合成誘導反応速度を大きく律速することが明らかになった。また、光合成光量子密度の高いギャップで生育したS.macrophyllaは林床のものと比べ、光合成誘導反応の制限が明らかに低いことがわかった。これらの測定結果の一部はすでに論文として発表し、その他の結果は現在別の論文として作成中である。
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