本研究では、申請者が単離した脂肪酸β酸化活性を欠損するアラビドプシスped2突然変異体について特にペルオキシソームタンパク質の細胞内輸送に着目して詳細な解析を行った。その結果、本突然変異体は、PTS1やPTS2を輸送シグナルとして持つペルオキシソームタンパク質全般についてペルオキシソームへの輸送活性が著しく低下していることが明らかになった。そのため、本突然変異体のペルオキシソームが必要なタンパク質を欠き、脂肪酸β酸化や光呼吸などの機能低下や形態異常などペルオキシソームに多面的な変異が引き起こされていた。PED2遺伝子は4番染色体に存在し、75kDのペルオキシソーム膜タンパク質をコードしていた。ヒトのペルオキシソーム膜タンパク質HsPex14pと弱い相同性を示したことから、このタンパク質をAtPex14pと名付けた。以上の結果から、PTS1型およびPTS2型ペルオキシソームタンパク質のどちらの細胞内輸送の制御にもAtPex14pが関与していると結論した。 ついで、タンパク質相互作用の観点からAtPex14pの機能解析を行った。2種類のペルオキシソーム輸送シグナル;PTS1、PTS2、にはすでにAtPex5pおよびAtPex7pと呼ばれる主にサイトソルに存在するレセプターが結合すると推定されていた。そこで、AtPex14p、AtPex5p、AtPex7p、PTS1型タンパク質、PTS2タンパク質間での結合活性を調べた。その結果、PTS1型およびPTS2型ペルオキシソームタンパク質は・サイトゾルでPex5pおよびPex7pからなるレセプターに捕捉された後、ペルオキシソーム膜タンパク質AtPex14pがレセプターカーゴ複合体中のPex5pと結合することによりペルオキシソームへ引き寄せられるという結論を得た。
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