ショ糖飢餓細胞の液胞オートファジーと色素体ポリフェノールオキシダーゼの活性化

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12640630
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 野末 雅之 信州大学, 繊維学部, 助教授 (30135165)
• 研究分担者: 斎藤 英毅 信州大学, 繊維学部, 講師 (30021174) ; 小島 峯雄 信州大学, 繊維学部, 教授 (30023469)
• キーワード: ポリフェノールオキシダーゼ / Ipomoea batatas / cDNAクローニング / アイソザイム / プロテオリシス / システインプロテアーゼ / 色素体 / 培養細胞

研究概要

サツマイモ(Ipomoea batatas品種キントキ)培養細胞の色素体から分子サイズの異なる(60kDaおよび65kDa)2種類のポリフェノールオキシダーゼ(PPO)アイソザイムを精製し、それらのcDNAをクローニングした。両アイソザイムのcDNA塩基配列から予測されるアミノ酸配列には、そのN-末端側に葉緑体ストロマ輸送シグナルとチラコイド内腔輸送シグナルとが、またPPO活性部位であり2つの銅原子の結合に関わるCuAおよびCuB領域の存在が確認された。両PPOアイソザイムのアミノ酸配列の相同性は、75.6%であった。精製された2つのPPOアイソザイムは、共に不活性型としてサツマイモ培養細胞の色素体内に存在し、ストロマ、チラコイド輸送シグナルが除去されていた。両アイソザイム遺伝子の発現の相違について、両アイソザイムmRNAの識別が可能なプローブを用いたノザンブロット解析により検討した。65-kDPPOのmRNAレベルは細胞を新鮮培地へ移植した直後に急激に増加するが、60-kD PPO mRNAは細胞移植とは関係なく、細胞の成長に伴って増加することがわかった。また、ショ糖を含む培地で培養した細胞では、これら二つのPPOアイソザイムは不活性型(60kDaおよび65kDaPPO)として色素体に存在しているが、ショ糖飢餓培地へ細胞を移植するとC末端側のプロテオリシスによりPPO活性を持つ39-kDおよび40-kD PPOとなる。このショ糖飢餓でのプロテオリシスによるPPOの活性は65kDa PPOの場合に、より顕著であった。また、このプロテオリシスは、システインプロテアーゼインヒビターにより阻害された。これらの結果から、サツマイモ培養細胞の2つのPPOアイソザイムの機能発現は、転写レベルと翻訳後の2段階で調節されていること、それらの調節様式はアイソザイム間で異なることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Xu,W.,Moriya,K.,Yamada,K.,Nishimura,M.,Shioiri,H.,Kojima,M.,Nozue,M.: "Detection and characterization of a 36-kDa peptide in C-terminal region of a 24-kDa vacuolar protein (VP24) precursor in anthocyanin-producing sweet potato cells in suspension culture"Plant Science. 160. 121-128 (2000)
• [文献書誌] Nozue,M.,Cai,M.,Li,L,Xu,W.,Shioiri,H.,Kojima,M.,Saito,H.: "Development of a reliable method for Agrobacterium tumefaciens-mediated transformation of mnulberry callus"The Journal of Sericultural Science of Japan. 69. 345-352 (2000)
• [文献書誌] Xu,W.,Shioiri,H.,Kojima,M.,Nozue,M.: "Primary structure and expression of a 24-kD vacuolar protein (VP24) precursor in anthocyanin-producing cells of sweet potato in suspension culture"Plant Physiology. 125. 447-455 (2001)
• [文献書誌] Nozue,M.,Nakano,Y.,Yoshida,Y.,Shioiri,H.,Kojima,M.: "Activation of polyphenol oxidase in sweet potato cells in suspension culture"Proceedings of The International Society for Tropical Root Crops. (2001)