研究概要 |
タバコ培養細胞BY-2は、オーキシンを含む通常の培地中では活発に分裂/増殖し、小型で、色素体は未分化な状態を保つが、オーキシンを除去しサイトカイニンを添加したアミロプラスト分化誘導培地中では細胞は殆ど増殖せずに体積を増大し、大量のデンプンを蓄積したアミロプラストが形成される。本研究では、アミロプラスト分化誘導系における細胞の挙動が根冠における細胞分化過程に類似していることに注目し、この系が根冠細胞分化のモデル系となり得るか検討するための基礎的な情報を収集した。根冠と同様、特異的分泌タンパク質が存在するか検討した結果、アミロプラスト分化誘導条件で分子量88,46,および44kDaの分泌タンパク質が特異的に分泌されることが明らかになった。このうち、44kDaの分泌タンパク質に関してはN末端アミノ酸配列の分析結果からペルオキシダーゼであることが判明したが、それ以外のタンパク質のN末端はブロックされており、配列を決定できなかった。限定分解による内部アミノ酸配列の決定を試みているが、決定には至っていない。また、44kDaの分泌タンパク質がペルオキシダーゼであることから、根冠における細胞外ペルオキシダーゼ活性増大の可能性を検討したが、肯定的な結果は得られなかった。遺伝子発現レベルでの変化を明らかにするために、通常培地及びアミロプラスト分化誘導培地でそれぞれ12時間培養した細胞から調製したRNAを用いてddRT-PCR、さらに網羅的に遺伝子発現レベルの変化を解析するためにcDNAアレイを用いた解析を試みている。当初はアラビドプシスのcDNAマクロアレイを用いる予定で、アラビドプシス培養細胞を利用できるか検討したが、明瞭な分化を誘導することができず断念した。現在は、理化学研究所との共同研究でBY-2のマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行っている。
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