高等植物花粉管内の精核は、アクチン-ミオシン系によって輸送されていると考えられている。本研究はまず、ユリ花粉管内の核輸送におけるミオシンの関与をミオシン活性の阻害剤である2、3プタンジオンモノキシム(BDM)を用いて調べた。その結果、原形質流動や精核と花粉管核の輸送が可逆的に阻害された。BDM処理した花粉管内のアクチン繊維の状態をローダミン-ファロイジン染色によって調べたところ、わずかにアクチン繊維の構築にみだれが認められただけであった。これらのことから、BDMによる核輸送の阻害はミオシン活性が阻害されるこによって引き起こされたと考えられる。おもしろいことに、BDM処理によって精核や花粉管核の長さ及び形態が変化した。この現象は、アクチン繊維の脱重合剤であるサイトカラシンDによっても引き起こされた。そして、微小管脱重合剤を用いた解析によって、微小管系もある程度精核輸送に関与している可能性が示唆された。このような薬理学的研究と平行して、核輸送を担うミオシンの同定を試みた。ユリ花粉管より調製した粗抽出画分から、ニワトリ胸筋から調製したF-アクチンを用いた共沈法によってミオシンを分離して、さらにカラム操作によってミオシンの単離を進めた。ミオシン活性は、ローダミン・ファロイジンで蛍光ラベルしたF-アクチンを用いた運動再構成系を用いて追跡した。その結果、原形質流動を担うクラスXIに属する170-kDaミオシン重鎖とは免疫性が異なる120-kDa成分が、常に運動活性を有する画分に含まれること。そして、この成分はATP依存的にF-アクチンに結合することから、新規ミオシン重鎖であると考えられた。
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