研究概要 |
1.前年度に引き続き、クラミドモナスより酵母のH+/Pi co-transporter遺伝子(PHO84)のホモログの探索をおこない、第3番目のホモログのクローニングに成功した。その結果、クラミドモナスでは、このタイプのリン酸トランスポータ遺伝子(PTAと命名)は、PTA1,PTA2,PTA3の3種類存在することが明らかとなった。これらは相互にアミノ酸配列レベルで80%以上の極めて高い相同性を示した。PTA1およびPTA3は,細胞のP欠乏3時間以内にその転写が完全に抑制された。一方,P欠乏3時間処理ではPTA2の転写量に変化は見られなかった。ジェノミックサザン解析およびノーザン解析の結果,クラミドモナスには,PHO84ホモローグはこれらを含め3または4種類しか存在しないこと,3種の遺伝子の+P状態での転写量は,1>3>2の順であること,さらに,P欠乏処理で誘導のかかるようなPHO84ホモローグは存在しないことが判明した。 2.本年度、新たにクラミドモナスより、酵母のNa+/Pi co-transporter(PHO89)のホモログとなる遺伝子を2種類(PTBと命名)クローニングに成功した。PTB1は、クラミドモナスのヒ素耐性変異株の原因遺伝子としてクローニングされPTB2は、PTB1のホモローグとしてクローニングされた。両遺伝子のリン酸欠乏での転写調節を調べた結果、PTB1の転写量はPTB2と比較して遙かに少ないこと、また,PTB2の転写量は-P処理で強く誘導されることが判明した。PTB2以外にはP欠乏で誘導のかかるPTAもしくはPTBホモローグは存在しないことから、クラミドモナスにおいては,PTB2がリン酸欠乏時に誘導のかかる高親和型リン酸トランスポーターをコードしていることが強く示唆された。
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