研究概要 |
光合成の光化学系II複合体は、総分子量320kDaの、光エネルギーの生物利用可能な化学エネルギーへの変換・水分解・酸素発生反応を行う重要な超分子複合体である。本研究の目的は、光化学系II複合体の結晶構造解析を行うため、申請者らが好熱性らん藻、Synechococcus vulcanusから単離・精製し、結晶化に成功した、高い酸素発生活性を持つ系IIコア粒子中のすべてのサブユニットを同定し、その中、遺伝子配列が未定のものについては、その遺伝子を単離し、配列決定することである。本年度では、結晶化に用いた光化学系II複合体を高分解能電気泳動により分離し、各サブユニットの同定を行った。すでに報告された結果との比較により、結晶化に用いたらん藻の光化学系II粒子には膜貫通蛋白質として、D1(psbA),D2(psbD),CP47(PsbB),CP43(psbC)サブユニット、チトクロムb-559のα,βサブユニット(psbE,psbF遺伝子産物)、低分子量のpsbH,psbI,psbJ,psbK,psbL,psbM,psbN,psbX各遺伝子産物の計14個のサブユニットが含まれていることが分かった。また、膜表在性蛋白質として、33kDa(psbO),チトクロムc-550(psbV),12kDa(psbU)の3つのサブユニットが含まれていた。この内のいくつかのサブユニットについては、本研究の開始時点でその遺伝子配列が未定であったが、最近、近縁の好熱性らん藻、Synechococcus elongatusの全ゲノム配列がかずさDNA研究所により決定され、その配列を利用した系II複合体のX線結晶構造解析を進めている。
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