研究概要 |
細胞性粘菌がpolysphondyliumのgp64は細胞膜タンパク質である.まず、gp64のmRNAとタンパク質の発生にともなう量的解析を行った.mRNAは増殖期に活発に転写され,タンパク質はmRNA合成とともに平行して起こる.合成されたタンパク質は発生の後期迄は非情に安定で、その後タンパク質は分解し始める。gp64が発生を抑制する事を前提に考えると、この様な転写と翻訳は、急激なmRNAの転写でタンパク質を早期に蓄積し、その後は、このタンパク質の安定性を利用して、発生前半での抑制機能を発揮すると考えると予想されるものである.gp64の機能を解析するために、過剰発現株を解析した。光の下で、野生株と過剰発現株を発生させると、両者は似たように発生した。暗所では野生株は発生が遅延し,約48時間に子実体を作成した。過剰発現株では、大多数の細胞では集合自体が起こらないが小数は局所的に集合してシリンダー状の移動体を形成した。この移動体は,48時間でも多くは移動体であったり、カルミネーションの入る段階にあった。暗所において過剰発現株が集合しないことが、細胞内cAMPの減少による可能性を考え、40mM 8-Br-cAMPの処理を行いフィルター上で発生させた。その結果、未処理に比べた、シリンダー状の移動体が多数形成された。このことは、gp64の過剰発現は,細胞内cAMPの低下を起こし、PKA活性が増加せず、結果として細胞集合が起きないという図式が考えられる。また、Dictyosteliumの予定柄マーカーecmBの発現を解析した結果、野生林では第一次柄とsorogen先端部での染色が起こる。野生株のsorogenが紡錘形であるのにたいして、過剰発現株のまれに生じる移動体の形態は、後部はシリンダー状のままであり、この形態はecmB遺伝子の産物等が出来ない為に第一次の柄が糸状とならない事を示唆している。
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