生殖関連ホルモンとその受容体を各種の脊椎動物(特に爬虫類)から同定し、脊椎動物生殖内分泌系の特徴と進化を解明することが本研究の目的である。本研究期間中以下の結果が得られた。 1)トカゲ飼育コロニーの確立:爬虫類の研究は実験室で飼育・管理可能な動物種がいないため、大きく遅れている。初年度は、5-6種のトカゲを候補としたが、環境温度に依存した性決定機構をもつヒョウモントカゲモドキが最も将来性のある種と判断した。現在、3世代にわたり繁殖が続けられ、約60匹の飼育群を確保することに至った。 2)鳥類・爬虫類の生殖関連ホルモン受容体の同定:ウズラからGnRH受容体2種そして上記の研究により飼育管理しているヒョウモントカゲモドキからGnRH受容体2種とエストロゲン・アンドロゲン・プロゲステロンの各受容体の部分配列を得ることに成功した。現在RACE法を用いて全長配列を同定している。 3)GnRHの新しい生理機能の分子機構:初年度、細胞コロニー形成率に対するGnRHの機能を発見した。引き続きこの生理機能が標的細胞のautoまたはparacrine活動と密接な関係をもちながら、促進的あるいは抑制的に働くことも明らかにした。GnRHが示すneuro-またはimmuno-modulator・がん細胞増殖抑制など様々な生理現象がコロニー形成率の調節という生理機能を通じて引き起こすとともに、GnRHがもつ進化的本来の生物活性であることも示唆されている。 4)Guinea pigのGnRH受容体のクローニング:哺乳類で唯一特殊なGnRH分子種をもつGuinea pigのGnRH受容体遺伝子を初年度に単離し、その特徴を解析した。現在、組替え遺伝子を細胞株に発現させ、各GnRH分子種との結合と細胞内情報伝達系の活性化の違いを分析し、受容体の性質を調べている。
|