研究概要 |
1.RT-PCR、in situ hybridizationおよび免疫組織化学的手法を用い、ニワトリの眼におけるα-MSH発現を調べた。その結果、発生過程,(孵卵10日〜孵化)の網膜色素上皮細胞(RPE)にα-MSHの発現を見いだした。α-MSH受容体であるCMC1、CMC4、CMC5がRPEに隣接する脈絡膜と神経網膜に発現していたことから、RPEがα-MSHの分泌を介して隣接組織の組織形成に関与している可能性が示唆された。また、眼におけるα-MSHの発現は、孵化後は神経網膜錐体細胞に移行した。α-MSHは、網膜組織形成後は神経伝達物質または神経調節因子として視覚機能調節に関わっている可能性が示唆された。従前の鳥類α-MSH調節系に関する成果とあわせて、鳥類α-MSH自己分泌/傍分泌説を提唱した 2.成長ホルモン(GH)は糖尿病性網膜症の原因因子である。発生過程のニワトリの眼におけるGH発現を調べたところ、新規GH isoformの発現を検出した。このGH isoformは、ヒトにおいて網膜症を引き起こすとされるGH isoformに酷似したタンパク構造をとるが、下垂体型GHの加水分解により産生されるヒトの場合とは異なり、GH遺伝子の第3イントロンから転写されるmRNAにコードされるものであった。このGHは、孵卵10日〜孵化までの網膜色素上皮細胞(RPE)にGH受容体を介して結合する。この時期は、RPEにおけるα-MSH産生が観察される時期と一致することから、同定した新規GHは、RPEにおけるα-MSH産生を介して網膜組織発生を制御している可能性が示唆された。 3.鳥類のアグチ関連タンパクは、ほ乳類の場合と同様に、infundibular NP-Yneuronに共発現していた。節食行動制御機構が鳥類でも保存されていることが明らかになった。
|