研究概要 |
マングローブ植物に限定的に生じる真性胎生発芽(果実が栄養的に親植物に依存している状態で、果実内の種子が発芽をし,発芽した胚が果実の外側に現れる現象)を説明するために、根から吸収した塩類を胚と果実の間を充填する胚乳に蓄積し、この塩類の"生物学的防菌機能"によって胚が果実を突き破った際の果実裂開部からの細菌・菌類の進入が防がれるという仮説を提唱したが、この仮説がある程度証明された。 受精後における胚乳の発達を詳細に調べたところ、胚乳は胚の幼根側で活発に生長をして細胞数を増し、これが常に胚を覆い、前記の様に胚が果実の外側に現れる際に胚と果実の間を充填することを発生的に確かめることができた。研究課題では種衣としていた構造は、名称を胚乳に改めなければならない。 胚乳組織の塩類濃度を、ナトリウム、カリウム、マグネシウムで調べたが、胚が子葉、胚軸、幼根に分化する若い段階から胚軸が果皮内を伸長するまでの期間と胚が果実を突き破る段階とで比較した場合、乾重量でそれぞれ3倍から4倍の塩類(ナトリウムで0.60%〜2.5%)の急増があることが分かった。若い段階での低塩類濃度は、小さな胚に生長阻害を与えることが無いか少ないと予想され、また、胚が相当量の体積を持つようになり、胚軸が果皮から現れてからの段階では、胚乳内の高塩類は胚の生長にそれほど影響を及ぼすとは考え難い(胚乳の胚に対する割合が極めて低くなる)。一方、胚乳の高塩類濃度は細菌・菌類の進入を防ぐに有効に働く。
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