研究概要 |
平成12年度の目標は、ムラサキイガイ前足糸牽引筋(ABRM)の形質膜に由来するCa結合タンパク質(MCBP-450)の細胞内局在様式を明確にするための免疫電顕実験の最初の段階として、抗体精製用に形質膜からMCBP-450を単離することであった。補助金の交付内定通知受領後、Yamanobe and Sugi(Biochim.Biophys.Acta 1149:166-174,1993)の方法に従ってMCBP-450の単離を始めた。単離作業の各回毎に10kgのムラサキイガイからABRMを摘出し、遠心分画法により形質膜画分をとり、Sephacryl S-300カラムおよびBond Elut C18カラムで精製し、最後にMonoQ H5/5カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによりおよそ0.15mgのタンパク質を得た。本年度内の6回の単離作業で1mg弱のタンパク質が得られたが、製薬会社に委託して抗体を作製するには2mg強の抗原が必要であり、現在なお単離作業を継続している。なお、各単離作業毎のタンパク質収量は前述の論文から予想された量の1/3程度と少なかったため、カラムの変更も含め、単離過程の改善を検討中である。また、ABRMと対になっている後足糸牽引筋(PBRM)もMCBP-450をもつ可能性は高く、同等であれば単離のための生筋試料は倍増するので、並行して、PBRMの筋収縮特性、微細構造観察および細胞内Ca局在に関する電顕細胞化学を始めている。一方、MCBP-450以外のCa結合タンパク質がABRMの形質膜に局在するか否かについて検討するために、市販のカルモデュリン抗体を入手し、ホルムアルデヒド固定-ロウィクリル超低温紫外線重合樹脂包埋した静止時のABRMについて免疫電顕を試みており、結果について現在解析中である。
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