研究概要 |
ムラサキイガイ前足糸牽引筋(ABRM)形質膜由来のCa結合蛋白質(MCBP-450)の細胞内局在を明らかにする免疫電顕実験のために、抗体作製用に形質膜からMCBP-450の単離を試みた。Yamanobe and Sugi(Biochim. Biophys. Acta1149:166-174,1993)の方法により、SDS-PAGEで分子量450kDa相当のバンドを示す蛋白質分画を得た。この分画は、Ca指示薬quin2(1mM)の処理で蛍光を発することから、分画内にはMCBP-450が含まれると考えられた。しかし、電気泳動から推定される450kDaの蛋白質収量は直接抗体作製のための抗原として用いるには著しく少なく、合成ペプチドを抗原とする目的で蛋白質のアミノ酸配列を解析するにも十分な量ではなかった。透析後、SDS-PAGEでは450kDaのバンドは消失し、代わりに高濃度で100kDa相当のバンドが認められた。この蛋白質は450kDaの蛋白質の分解産物である可能性が考えられたので、この蛋白質の一部ペプチドについてアミノ酸配列を解析し、12残基までの配列を確定した。既知の蛋白質のアミノ酸配列と比較検討した結果、このアミノ酸配列はα-actininの内部配列と高い相同性を示した。しかし、単離の各段階で示された結果から、この蛋白質がα-actininであるとは考え難く、むしろ、MCBP-450の分子内にα-actininと良く似たdomainが含まれている可能性を示唆していると考える方が妥当である。一方、免疫電顕実験の準備として進めていたABRMにおけるCa-結合蛋白質calsequestrinの細胞内分布の研究では、筋小胞体内にcalsequestrinが局在することを明らかにした。今後、MCBP-450の単離・精製法を改善し、当初の研究目的を達成するために研究を継続する予定である。
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