研究概要 |
〔目的〕ゾウリムシでは表層単位増殖領域(各表層単位は2個の基粒体(2bb)を持つ)の後端、すなわち、細胞の後端1/5ほどを占める非増殖領域(各表層単位は1個のbbしか持たない)の直前にある2bbの表層単位こそ永続的に増殖を続けるstem unitsであると、我々は考えている(Takahashi et al.,1998)。本研究は、昨年に続き、この仮説を実証することを目的として行なった。 〔研究成果〕ゾウリムシの後端、約1/4を切除する手術を行ない、それらを、経時的に固定し、鍍銀法とSEMpore法で作成した標本を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。対照区(非手術体)の1繊毛列は平均36個の表層単位で構成されているが、手術個体では平均24単位になっており、非増殖領域に特異的な1bb領域を持っていなかった。それらの手術個体は、約48時間後に最初の細胞分裂を行い、分裂で生じた前娘細胞の1繊毛列は平均36単位、後娘細胞では平均26単位で、しかも1bbの単位を細胞後方領域にもっていなかった。また、第2回分裂は、術後約70時間で起こった。この場合、第1回細胞分裂の前娘細胞由来のものは非手術体と区別がつかないが、後娘細胞由来の後娘細胞の1繊毛列は平均32単位であったが、1bbの単位を細胞後方領域にもっていなかった。また、第1回細胞分裂中のものでは、分裂線は前から15-17単位目のところに入っていた。このことは、分裂溝が、手術体の赤道部に入るのではなく、対照区と同じ位置に入る事を示唆している。すなわち、分裂溝の位置は細胞表層の位置情報によって決まると考えられる。また、後方領域に存在する全ての単位が増殖能を持っていることが示唆された。しかも、分裂の度に後娘細胞の表層単位数は増加していた。このことは、stem unitsが存在しなくても表層単位が補充されることを示している。しかし、現在、第3回分裂後の後娘細胞では、1繊毛列の単位数がどのようになるかはまだ不明であるので、非増殖域が出現するかどうかをさらに調べる必要がある。
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