ザリガニは尾部への強い機械的刺激に対し巨大ニューロンLGを介した逃避行動を示すが、繰り返し刺激を与え続けるとLGは発火しなくなり、ザリガニは馴化を起こす。 (1)様々な刺激間隔で繰り返し刺激を与え馴化保持時間を定量解析したところ、i)馴化保持時間は与えられる刺激のインターバルに応じ、短期と長期に分かれること、ii)短い間隔で刺激を繰り返し与えると、馴化は速やかに成立するが、すぐに応答が回復すること、iii)長い刺激間隔で刺激を与えると馴化の成立は遅れるが、長期に渡って馴化が保持されること、iv)短期保持から長期保持に移行するためにはある程度の休止ピリオドが必要不可欠であることが明らかとなった。 (2)細胞内記録法を用いた生理学的実験の結果、i)LGは馴化を起こす際、そのβ成分のEPSP振幅が減少していること、ii)β成分のEPSPをLGに供給している介在ニューロンA及びCの感覚刺激に対する応答はLG馴化前後で極端な変化が見られないこと、iii)25個の同定上行性介在ニューロン並びに9個のスパイキング局在ニューロンの感覚刺激に対する応答も繰り返し刺激によってほとんど影響を受けていないこと、iv)従って、従来Zucker(1972)によって提唱されてきた馴化成立の神経機構が誤りであること、v)クラーレ灌流によってβ成分前半のEPSP振幅が減少したことから、ダイレクトな化学シナプスがLG上に形成されていることが明らかとなった。
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