研究概要 |
ユビキチン/プロテアソーム系は、細胞内タンパク質分解系として単寿命のタンパク質の分解やタンパク質による細胞機能の調節に重要な役割を果している。受精時の卵・精子相互作用や精子運動の制御等、受精時の精子の機能にも重要な役割を果すことが知られている。本研究は、特に後者の、運動制御における役割を解明すべく、サケ科魚類と原索動物ホヤを研究材料に用いて研究を進めた。まず、プロテアソームによってリン酸化制御を受けるタンパク質について、これまでダイニン軽鎖を中心に調べてきたが、ダイニン軽鎖の他にも、鞭毛基部に存在する15kDaタンパク質もプロテァソームによる制御を受けることが明らかになった。また、プロテアソーム系の上流に、カリウムチャネルに依存した細胞膜の過分極が存在し、プロテアソーム系の活性化の引き金になっていることが明らかになった。さらに、運動制御にユビキチンが同時に働いているか否かを検討するために、様々な生物の精子を用いて、ユビキチンタンパク質の比較解析を行った。その結果、サケ科魚類の精子には際立ったユビキチンタンパク質が存在しないこと、ホヤ類では多くのユビキチンタンパク質が精子に存在するが、その局在は核とミトコンドリアの境界領域であり、受精時のミトコンドリアの脱離に関与している可能性が出てきた。別のアプローチとして、約12,000のホヤ精巣EST解析により、数多くのユピキチン系、プロテアソーム系の遺伝子が単離された。特に、ユビキチン系の各種酵素、26Sプロテアソームの各種サブユニット、免疫プロテアソーム等、精子の機能や免疫系の原始モデルとしてのホヤ卵・精子相互作用を示唆する分子が多数同定された。これりをプローブとして、ユビキチン・プロテアソームの精子機能における新たな局面が明らかになると期待される。
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