本研究では、イモリの再生網膜で外来遺伝子を発現させるための試みとして、以下のことを行った。 1.再生網膜細胞でのGFP遺伝子の発現 まず、広範な活性を示すCMVプロモーターの下流にGFP遺伝子をつなぎ、カチオンリポソームとともに、イモリ成体の網膜に導入した(リポフェクション)。3日後に網膜組織切片を蛍光顕微鏡により観察したが、有意なシグナルは検出されなかった。そこで、抗GFP抗血清を用いて組織切片を免疫組織化学的に解析したところ、抗GFP抗血清の反応性が認められた。しかし、反応性から推測すると、発現量が少ないことが考えられたため、現在、遺伝子導入方法の改良やプロモーター・ベクター系の検討を行った。 2.再生過程の網膜に発現する遺伝子の解析 アンチセンスオリゴ等を利用して特定遺伝子をノックダウンするためには、その遺伝子の配列情報を得る必要がある。そこで、イモリ成体の網膜(正常網膜)および再生過程にある網膜(再生網膜)に由来するcDNAライブラリーを作製し、EST解析を行った。まず、それぞれのcDNAライブラリーから無作為に百数十クローンを単離し、遺伝子上流側から数百塩基の配列を決定した。正常網膜および再生網膜に発現する遺伝子のうち、4種のオプシン・Otx2(ホメオドメインタンパク質)およびスタスミン(神経軸策の伸長時に発現が認められるとされている)をコードすると考えられるcDNAの翻訳領域全長を単離した。オプシンの発現は再生中期第3ステージ頃に視細胞のみで発現が始まり、正常網膜と再生完了後の網膜で発現の様相に違いはなかった。Otx2およびスタスミン遺伝子は、再生過程の初期から網膜全体に強く発現していることを明らかにした。そこで、スタスミンmRNAと相補的なMorpholinoアンチセンスオリゴを合成し、これをイモリの眼球内に導入して、網膜の維持および再生過程での影響を調べた。
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