研究概要 |
1)カイコシステインプロテアーゼ阻害因子(BCPI)の阻害機構の解析 BCPIは,カテプシンL様システインプロテアーゼを選択的に阻害することが解った。すなわち,ヒトカテプシンLやカイコシステインプロテアーゼ(BCP)をナノモラーレベルのKiで阻害するが,パパインやカテプシンBはほとんど阻害しない。この事実は,おなじくシステインプロテアーゼ阻害因子であるいわゆるシスタチン類と根本的に異なり,新しい選択型の阻害タンパクであることを示している。また,その阻害様式は,スロウバインデイング様であること,BCPIのC-末端の2アミノ酸残鎖が分解される等の事実も解った。 BCPI様のタンパクとして唯一報告されているCTLA-2に関しても調べたが,同じようにカテプシンL様システインプロテアーゼを選択的に阻害し,これらプロペプチド類似タンパクは,祖先のプロペプチド同様,選択的阻害タンパク質であることが強く示唆された。 2)カイコシステインプロテアーゼ阻害因子(BCPI)のカイコ多核体ウイルスシステインプロテアーゼに対する効果 多核体ウイルスがカイコに感染すると,システインプロテアーゼを分泌するが,BCPIはこの酵素を強く阻害することが解った。この酵素は,カイコ血液に分泌されるが,BCPIも血液中から発見された阻害因子である。この事実は,BCPIの生理的機能の一つとして,抗ウイルス作用の存在を強く示唆するものである。 以上の研究により,BCPIやCTLA-2の様なプロペプチド類似阻害タンパク質は,選択的阻害活性を示し,この性質は,選択的阻害剤の開発研究にもヒントを与えるものとしても注目され,さらなる詳しい解析を行っている。
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