先体(アクロゾーム)は精子頭部に存在する小胞状構造物で、その内分に種々の酵素を含んでいる。精子は卵に到達すると、卵を包む透明体に接触することによって先体反応を起こす。先体反応は、精子形質膜と先体外膜の膜融合によって起きる一種のエキソサイトーシス現象である。本研究は、先体反応における膜融合プロセスの分子機構の解明をめざすことを目的とした。本研究ではまず、神経終末のシナプスにおけるエキソサイトーシスに関わる分子群の内、シンタキシン分子が精子に発現しているかどうかを検討した。 多種のシンタキシン分子種の内、シンタキシン2および4がラット精巣に高発現していることをRT-PCR解析によって見い出した。シンタキシン2には三種のアイソフォームがあるが、これらの共通部分のペプチドに対する抗体を作製した。密度勾配分画、イムノブロット、免疫組織化学的方法を用いた研究の結果、シンタキシン2が哺乳類精子の先体領域に局在することが判明した。さらに、先体反応を起こし先体を消失した精子では、シンタキシン2も消失することがわかった。
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