(1)タコ心活性ペプチド テナガダコの脳から体心臓の心拍頻度および強度を増強させる二種のペプチドを単離した。体心臓でのペプチドの存在をTOF-MSおよびtandem MS分析によって確認した。これらのペプチドは、タコの循環器系に重要な役割を果たしていると考えられる。 (2)マダコ性腺刺激ホルモン放出ホルモン様ペプチド マダコ脳から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の同族と考えられるペプチドを単離した。ウズラの騨下垂体培養細胞に僅かではあるが黄体形成ホルモンを分泌させる作用を示した。RT-PCR転写物は、食道上脳、食道下脳、嗅葉-脚葉複合体、および視柄腺に発現していた。免疫陽性を示す神経細胞体と神経繊維が、視柄腺の活性を支配する神経中心と考えられている食道上脳の脳下脚葉に観察された。視柄腺神経および視柄腺の分泌細胞である星状細胞の細胞質に陽性の反応が確認された。以上の結果から、単離下ペプチドは、神経ホルモンのみならず分泌型ホルモンとしてタコの生殖機能に関与していることが示唆された。 (3)マダコにおける第二のバソプレシン/オキシトシン超族ペプチドメンバーとなるペプチド オクトシンは、既に知られているセファロトシンに加えてマダコのバソプレシン/オキシトシン超族ペプチドの二番目のメンバーである。それぞれの前駆体は、互いに非常に似た構造をしていた。構造は、既知のバソプレシン/オキシトシン超族ペプチド前駆体に特徴的な、シグナル配列に続いてペプチドをコードする領域、およびニューロフィジンドメインで構成されている。それぞれのニューロフィジンドメインが全く同じ遺伝子でコードされていた。それぞれの前駆体遺伝子は、脳の異なった領域に発現していた。すなわち、オクトシンは、食道上脳の随意運動を司る領域に主に発現し、セファロトシンは、大静脈神経内分泌系に軸策を送っている血管運動葉に主に発現していた。
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