研究概要 |
車軸藻網接合藻目内でのミカヅキモ属(Closterium)の系統学的地位並びに属内での形態種間の関係を調べるために,ミカヅキモの形態種(21分類群)について核rDNAのsmall subunit(SSU)領域の配列を新たに調べ,車軸藻綱の他の目の分類群と共に最大節約法と最尤法により系統樹を作成した。以前の報告と異なり,ミカヅキモ属は単系統であり,形態形質の類似性から種複合体として扱われていたC.moniliferum-ehrenbergii種複合体とC.calosporum種複合体も各々単系統であることが分子情報からも支持された。さらに,C.moniliferum-ehrenbergii種複合体では,ホモタリズムによって休眠胞子を形成する培養株がヘテロタリズム及び単為生殖によって休眠胞子を形成する培養株よりも先に分岐していること,即ちこの種複合体の交配様式の祖先形質はホモタリズムであることが示された。以上の結果については,Journal of Phycologyに現在投稿中である。また,C.moniliferum-ehrenbergii種複合体に属する62の無菌培養株を用い,核rDNAのSSU内に存在する1506 group I intronと5.8S rDNAとlarge subunit (LSU)間に介在するITS-2領域の配列を新たに調べ,ホモタリズムの株を外群として近隣結合法と最大節約法により別個に系統樹を作成した。これらの系統樹では,単為主殖を行う株は単系統を示さず,これらの内C.ehrenbergiiの単為生殖株はへテロタリズム株の交配群Kと一つのcladeを形成した。さらに,これらのITS-2の二次構造を比較すると,ベトナム産の単為生殖株のみへリックスIの先端のループを含むヘリックス構造(40nt)が重複していることが分かった(これらの重複配列間の違いは1塩基しかない)。他のC.moniliferum-ehrenbergii種複合体のすべての株ではこの構造は1つしかないことから,これらの結果からヘテロタリズムから単為生殖への交配様式の進化の道筋が示された。以上の結果についても,現在草稿を作成中である。
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