研究概要 |
本年度は,多くの縦溝珪藻と比較して、短い縦溝を有し,反面,長い中心節領域をもつ解散羽状珪藻Berkeleya rutilansの殻の形成過程を解明した.本種の長い中心節領域は,昨年度,形成過程を明らかにした無縦溝珪藻の完成殻と類似しており,その形成過程にも相同性が期待されたが,結果は,Berkeleyaでは最初から細長い帯状の中肋が形成され,直接の類似性は認められなかった.本種の縦溝領域の形成過程は,Naviculaに見られるものと類似していた.また,原始縦溝類Eunotia 10種,Luticola 1種,Gomphonema 1種,Navicula 1種,Diatoma 1種の18SrDNAに基づく系統解析を行った結果,Einotia属は双縦溝珪藻の中で,最初に分岐する分類群であることがわかった.また,珪化に関わるタンパク質silaffinの遺伝子をPCR法によりSilindrotheca 2種 およびNitzschia 1種から増幅することに成功した. 共同研究者の南雲は,主に単縦溝いわゆる珪藻殻の一方にのみ縦溝を持っグループに的を絞って,殻形成過程を探求した.その結果,海産着生種Coconeis convexaについては殻の初期形成段階では,縦溝殻,無縦溝殻の両殻がほぼ同時に形成が開始され,その後縦溝殻の沈着が無縦溝殻より先行して進み,縦溝殻がほぼ完成してから無縦溝殻の珪酸沈着が起こるなどの新知見を得た.その結果の一部はすでに日本植物学会65回本会で発表(南雲保,鈴木秀私長田敬五.2001)すると共に,学会誌(Suzuki, H,,Nagumo, T.& J.Tanaka 2001)において公表した.また研究に適した材料の探索のため,各地から採集された珪藻試料のフロラや出現種の形態を精査し,結果を学会誌,学会大会で公表した.
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