研究概要 |
1.季節型の発生について 日本産のモンシロチョウは長日条件下(16時間明-8時間暗)で夏型が,短日条件下(8時間明-16時間暗)で春・秋型が発生する.これはヨーロッパ(ドイツ)産モンシロチョウについても同様であった. 2.日本産短日型雄の雌選択について 日本産長日型雌と日本産短日型雌を,黒布地を張った平板上に15cm間隔で並置して日本産短日型雄に提示した結果,雄は自分と同じ季節型の短日型雌により高頻度で接近した.これと昨年の結果との比較から,(1)モンシロチョウの雄の配偶者選好性は,季節型によって変化する雌の翅の色の変化に並行して変化すること,(2)これによって雄は同種の雌を特定できることが分かった.さらに(3)早春あるいは晩秋に日本産モンシロチョウとヨーロッパ産モンシロチョウが同所的に発生すると,両者は交雑しうること,したがって(4)亜種間生殖隔離は不完全であることが明らかになった. 3.世界各地のモンシロチョウの系統分類学的関係 雌の翅の紫外色の有無がモンシロチョウの地理的分布と関係があるかどうかを知る手がかりを得るために,ヨーロッパ(イギリス,ドイツ),中国(瀋陽と長春),韓国,日本のモンシロチョウからミトコンドリアDNAを抽出し,DNAバンドの解析によってこれらの地域のモンシロチョウの分子系統樹の作成を試みた.その結果,(1)ヨーロッパのモンシロチョウと極東地域のモンシロチョウとは互いに遺伝的に遠いこと,(2)極東地域のモンシロチョウのうち,中国の2地域のモンシロチョウと韓国および日本のモンシロチョウは別グループを形成することが分かった.
|