研究概要 |
ハイマツとキタゴヨウの交雑帯については,葉緑体DNAとミトコンドリアDNAについて,遺伝子浸透のパターンが明らかとなっている(Watano et al.1995,1996,Senjo et al.1999).本研究では更に,核ゲノムのDNAマーカーの開発を行い,3種類のゲノム全てで交雑帯の遺伝的構造の記述を目指す.綿野は,種特異的な核マーカーの開発を試みた.マーカーの開発には,テーダマツのESTライブラリーについてTemesgenらが作成したPCRプライマーを利用した.開発手順としては,PCB産物の変異をSSCP法でスクリーニングし,その中で、ハイマツとキタゴヨウで種特異的なバンドパターンを示すものを探し出した.全部で78種類のプライマーセットについてテストし,ハイマツとキタゴヨウの核DNAマーカーとして利用できるものを8セットを選びだした.今後,このマーカーを用いて,個体ごとの雑種性(ハイマツとキタゴヨウのゲノムがどのような比率で混じっているかの程度)を算定して,交雑帯の遺伝的構造を記述する予定である.谷は,このハイマツとキタゴヨウの系で利用できるマイクロサテライトマーカーの開発を試みた.特に,マイクロサテライトを豊富に含むクローンライブラリーを効率的に作成する方法を模索した.手順は1)ハイマツの全DNAをNdellで消化し,2)この断片にSau3Alカセットをライゲーションする.3)ビオチン(CT)15ヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせた後,4)ビオチン抗体のついた磁性ビーズに吸着させ,5)マイクロサテライトを含むDNA断片を濃縮させた.5)クローニング後,塩基配列の決定を行い、マイクロサテライトの有無を調べた.現在のところ,濃縮率は20%程度であるが、70%程度に向上させる予定である.
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