研究概要 |
(1)ハイマツとキタゴヨウの交雑帯の遺伝的構造を解析する目的で、核の共優性遺伝マーカーをPCR-SSCP法により開発した。テーダマツのESTプライマーセットをスクリーニングした結果、ハイマツとキタゴヨウで種特異的な対立遺伝子を示す10個のマーカーを開発した。そのうち8個(PtIFG__0464,0893,1454,2615,8728,9008,9076,9098)を用いて、東吾妻山と谷川岳の2つの交雑帯の解析を行った。交雑帯の各個体の核ゲノム組成を定量化するため、雑種指数(解析した遺伝子のうちハイマツ由来の遺伝子の割合)を最尤法で推定した。東吾妻では、標高1800-1900の亜高山針葉樹林帯を境に、下部では平均0.073、上部では平均0.949と二極化していた。下部のミトコンドリアDNAは65.9%がハイマツ由来であり、核よりもミトコンドリアDNAの程度が大きいことが明確になった。谷川では、標高に応じてクライナルに雑種指数が変化し、典型的な交雑帯の様相を示した。この山では、頂上部へのキタゴヨウ葉緑体DNAの浸透が核より大きかった。 (2)アジア産ゴヨウマツ類において解析可能なマイクロサテライトマーカーの開発を行った。マイクロサテライトモチーフのオリゴヌクレオチドを付けた磁性ビーズによるマイクロサテライトの濃縮をこころみ、CTモチーフで3度、ATGモチーフで1度の濃縮を試みた。得られたライブラリーのうち300弱のシーケンスを読み、ユニークかつマイクロサテライトを含んだクローンを86個得た。CTモチーフではマイクロサテライトの濃縮率は70%ほどと高いが、ATGモチーフの濃縮については、更に改善が必要である。今後、プライマーの設計、多型の有無の確認を行う。
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