この研究の当初の目標は、有鱗類6-7科の代表種についてmtDNAの全塩基配列を決定し、a)トカゲ亜目内における4つの下目間の系統関係、b)トカゲ類内におけるヘビ類とミミズトカゲ類の位置づけ、c)メクラヘビ類の系統的位置づけ、を解明することであった。我々は、mtDNA塩基配列を様々な爬虫類から決定する方法論の改良に取り組んだ結果、予定した以上のペースでmtDNA解読を行うことができた。現在までに12科の有鱗類からmtDNA全塩基配列を決定している。トカゲ類mtDNAは、一部の科の代表種を除き、いわゆる典型的な遺伝子配置を持つことが分かったが、多くのタクサで制御領域の中に、他に類を見ないほど高頻度な繰り返し配列が見られた。コモドオオトカゲでは制御領域が2箇所に重複していることも分かった。分子系統解析を行った結果、1)イグアナ類は有鱗類の初期派生系統ではないこと、2)ヘビ類はトカゲ類とは別系統を成すこと、3)メクラヘビ類は他のヘビ類と独立に派生した系統ではないこと、などが示唆された。過去の分岐分類学的研究では、イグアナ下目の初期派生に対して数多くの共有派生形質が示されており、我々の解析結果は爬虫類の高次系統関係を分子的観点から検証することの重要性をますます際だたせることになった。今後はさらに多くの有鱗類のmtDNA全塩基配列を決定し、豊富な分子データに裏付けられた信頼できる分子系統解析を行っていきたいと考えている。
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