| 研究概要 |
繊毛虫のユープロテス(Euplotes)、特にEuplotes woodruffi種群でのメイトキラーついて種々の観点から研究と分析を行っている。接合時に、メイトキラーは接合のパートナー(センシティブ)を殺すという特徴をもつ。メイトキラーの分布と起原を探るため、北海道で1回、和歌山県・滋賀県・福井県で1回、島根県で2回、九州地方で2回、沖縄県で1回の採集調査を行い、多数のE.woodruffiと他のEuplotes属の株を単離・培養した。北海道では支笏湖、洞爺湖、石狩川、大沼、小沼で、和歌山県では紀ノ川で、滋賀県では余呉湖、琵琶湖、島根県では神西湖、斐伊川、静間川、田儀川、九州地方では白川、江津湖、球磨川、万ノ瀬川、池田湖、鰻池、萩原川、清武川、北川、沖縄県では沖縄市東南植物楽園、石川市のビオスの丘、奥川、大保川で本種群の多数の株を採集することができた。メイトキラーとセンシティブは形態的に区別できないので、熊本県江津湖産のメイトキラーの株から双体を実験的に作り、双体と接合させて、メイトキラーかセンシティブかを決定した。今回、シンゲン3の双体と他のシンゲン株を混合すると、微妙な条件を必要とするが、極めて低率でシンゲン間接合が生じることがわかった。非常に興味深いことに、オートガミーだけしか行わないオートガミーグループとの間でも接合対が形成された。この方法で、シンゲン3以外の本種群においてもメイトキラーの存在の有無を調べることが可能となった。本種群は,有性生殖の方法(オートガミーか接合)、接合型の数と繁殖系、生息環境(淡水か汽水)等の特徴から、3シンゲンと1グループに分けられている。今回調べた北海道、本州、四国、九州、沖縄県産のシンゲン1と2、オートガミーグループの株は、すべてメイトセンシティブであった。しかし、沖縄県産のシンゲン3に非常によく似た系統株との接合では、その系統株とシンゲン3のメイトキラーの両方の接合完了体が対の分離後2日以内に死亡した。沖縄県のこれらの株は、沖縄市と石川市の2ケ所の池から採集、単離されているが、新たな別の種類のメイトキラーである可能性が高い。結果の一部は、本年5月の日本動物学会中国四国支部大会で報告する。
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