研究概要 |
繊毛虫Euplotes属のE.woodruffi種群(シンゲン1,シンゲン2、シンゲン3、オートガミーグループ)、E.eurystomus、E.aediculatus、E.patella、E.harpaを北海道、本州、四国、九州、沖縄県で採集を行い、多数の株を作成した。このうち、E.woodruffi種群のシンゲン3でメイトキラーが発見されているので、主にこの種群で研究を行った。メイトキラーは接合後に対のパートナー(センシティブ)を殺すという特徴を持つが、センシティブとは顕微鏡レベルでは区別されない。そこで、2株の混合時に両者を区別するため、2細胞が融合した双体を実験的に作成し、この双体を用いて、E.woodruffi種群でのメイトキラー系統の探索を行った。シンゲン3は、島根、長崎、熊本、鹿児島、沖縄県で採集された。採集された698株をメイトキラーの双体と接合させて調べた。熊本県の水前寺湖と江津湖、沖縄県のビオスの丘と東南植物楽園の池にメイトキラーとセンシティブが共存していて、319株のうち287株(90%)がメイトキラーであった。それ以外の場所ではすべてセンシティブであった。興味深いことに、熊本県産のメイトキラー株と沖縄県産のメイトキラー株の接合は、互いに相手を殺しあう。両者は異なる種類のメイトキラーに属するのであろう。重要な発見なので現在研究中である。本研究のもう一つの重要な発見は、E.woodruffi種群の4種は生殖的に隔離されているが(Kosaka,1992)、ある条件下ではシンゲン3はシンゲン1および2のみならず、オートガミーグループとも接合することを発見した。このことにより、E.woodruffi種群のKosaka(1992)による種分化のプロセスの仮説が実証されたことになる。この条件下で接合対を形成させて調べたところ、これまでにシンゲン3と1では17株が、シンゲン3と2では60株が、シンゲン3とオートガミーグループでは204株が種間接合を行ったが、すべてセンシティブであった。
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