ショウジョウスゲの種内異数体株を岡山県、広島県および香川県より4集団採集し、減数分裂中期染色体の解析を行なった。現在までに染色体を分析したのは3集団で、2n=27〜2n=32までの連続した種内異数体が観察された。最も出現率が高かったのは2n=29の個体で、13株で見られた。また、ほとんどすべての個体で、III価染色体が1〜3個見られ、しかもへテロ対合をしていた。これらの結果より、ショウジョウスゲの種内異数性には異型III価が関与しているものと考えられる。 スゲ属植物は、非局在型動原体を持っており、染色体の識別には大きさしか使用できない。そこで、種内異数体の詳細な核型の解析を行うために、FISH法を用いて減数分裂期の染色体にマーカーを付けることを試みた。プローブはスゲ属植物の核リボソーム遺伝子18Sと5SをPCR法で増幅したものを用いた。葯を細かくメスで切り、セルラーゼとペクチナーゼの混合液で酵素処理し花粉母細胞をプロトプラスト状にする。次に、酵素とプロトプラスト混合液を一滴スライドグラスに落とし炎乾する。特に、酵素処理の時間と、酵素処理後に大きな組織を丁寧にピンセットで取り除くことが重要であった。このプロトプラスト空気乾燥法によって作成したプレパラートでは確実にFITCやローダミンのシグナルが観察され、減数分裂染色体の解析に有効であることがわかった。今後は、プロトプラスト空気乾燥法を用いてショウジョウスゲの種内異数性の成因を解析する予定である。
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