ショウジョウスゲには同一集団内で連続した種内異数性が存在することが昨年度で明らかになった。本年度は、日本の中国および四国地方の4集団より採集した47個体の減数分裂中期染色体の対合分析を行なった。その結果、2n=27〜32まで、連続した6種類の種内異数体が観察され、ほとんどの種内異数体で異型接合をしたIII価染色体が見られた。このIII価染色体は大型、中型、小型染色体からなる異型対合をしていた。 これらの種内異数体に同じスゲ属植物のササノハスゲの18S rDNAと5S rDNAをプローブとしFISHを行った。FISH実験には昨年度開発した減数分裂細胞のプロトプラスト空気乾燥法で作成した減数分裂染色体のプレパラートを用いた。18S rDNAのシグナルは、2n=28〜2n=31までの5種類の種内異数体すべてで大型染色体2対と中型染色体2対の両端に観察された。また、5S rDNAのシグナルは中型染色体1対に見られた。しかし、III価染色体やI価染色体には、18sおよび5sのシグナルは見られなかった。 ショウジョウスゲの種内異数性の成因としては、最初染色体の切断か融合などの構造変異が考えられる。また、染色体が非局在型動原体を持っていることから構造変異を起こした染色体は後代に生き残り、種内異数性が生じたものと推定される。今回の結果より、rDNA遺伝子を持つ染色体はそれぞれの異数体で同数存在することが明らかになった。同様な傾向が種内異数性を持つヒメカンスゲやヒメスゲでも観察されている。これらのことから、ショウジョウスゲの種内異数体はrDNA遺伝子を持たないIII価やI価染色体の不等分離によって生じ、集団内で維持されているものと推定される。
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