ショウジョウスゲには同一集団内に連続した種内異数性が存在することが今までの研究で明らかになった。本年度は岩手県、兵庫県よりそれぞれ1個体ずつ、岡山県より7個体、広島県より21個体の合計30個体について染色体の対合分析を行なった。その結果、2n=27〜32の連続した6種類の種内異数体が見られた。さらに、広島県大竹市弥栄峡で2n=46、岡山県御津郡湯須で2n=64の高次の染色体数を持つ個体が見られた。今回分析したものの中で2n=46と64の2個体をのぞく28個体では、III価染色体がほとんどの種内異数体で見られた。しかも、前年度と同様にIII価染色体のみで1〜2個見られ、すべて異型対合をしていた。2n=46の種内異数体は2IV+5III+11II+I、IV+2III+13II+10I、5III+13II+5Iの3種類の対合型が見られた。2n=64では3IV+2III+23II、2IV+4III+22II、2IV+28II、IV+2III+27IIの4種類の対合型が見られた。これらの高次の染色体数を持つ種内異数体は同型のIV価やIII価染色体が観察されることから、今まで見られた種内異数性の成因が異なると考えられる。2n=46に関しては非減数の配偶子と正常な配偶子の受精により形成されたものと考えられる。2n=64に関しても、同型のIV価やIII価が見られ、染色体の倍数化により出現したものと推定される。 種内異数体に18S rDNAと5S rDNAをプローブとしFISHを行った。5Sr DNAのシグナルはいずれの種内異数体でも中型染色体1対にのみ見られた。また、18S rDNAのシグナルは、大型染色体2対と中型染色体2対の両端に観察された。昨年の結果と同様に、III価染色体やI価染色体には18sおよび5sのシグナルは見られなかった。これらのことから、ショウジョウスゲの種内異数体はrDNA遺伝子を持たないIII価やI価染色体の不等分離によって生じ、集団内で維持されているものと推定される。
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