藍藻類の異常増殖機構については、これまでに多くの研究が成されてきたが、現在まで発生の予測は可能となっておらず、遊離細菌、付着細菌を含む微生物生態系全体についての研究が必要となっている。しかしながら、細菌群集、特に藍藻類に付着した細菌の挙動については技術的困難さからこれまで殆ど研究が行われてこなかった。本研究は、近年発達してきた分子生物学的手法、特に環境中の細菌相を直接検出できる核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション(FISH)法を用いて、藍藻類に付着している細菌群集について検討を行い、アオコの発生、衰退を微生物生態系の変動の中で評価し、アオコの発生予測、生態系制御に資することを目的として行った。16S-rRNA遺伝子に基づいたDGGE(denaturing gradient gel electrophoresis)法による細菌群集構造の変化についての検討の結果、霞ヶ浦湖水中の細菌の種組成は季節遷移に従って大きく変化し、季節に特徴的な細菌群集が存在することが明らかとなった。また1999年には夏期及び秋期の藍藻類によるブルーム発生の時期に、Actinobacteriaに属する特定の微生物の比率が増大することが明らかとなった。このことは藍藻類の増殖及び衰退と特定の細菌種との間に何らかの関連があることを示唆していると考えられる。また、富栄養湖である霞ヶ浦湖水中の遊離細菌、付着細菌相について解析を行った結果、湖水の方が多様性が高く、夏季に優先するバンドが付着細菌を含む細菌群集においても優先していることが明らかとなった。これらの知見に基づきFISHに使用するプローブの配列を決定し、FISHの条件検討に用いる細菌の単離を試みたが、プローブの特異性に問題があることがわかり、再度設計を行う必要がある事が明らかとなった。また、これらと平行して、FISHの条件検討を行うと共に、Chlorophyll aに妨害されない色素の選択を行った。
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