研究概要 |
1995年度以来調査を行ってきた、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園のチンパンジーの狩猟・肉食行動について彼らの捕食が狩猟対象となっている7種類の哺乳類(アカコロブス、アカオザル、ブルーモンキー、ブッシュバック、ブルーダイカー、ブッシュピッグ、イボイノシシ)の生息密度や個体数に対してどのような影響を与えているかという観点から資料の分析を行った。その結果、1.最も頻繁に食べられているアカコロブスは、チンパンジーの遊動域内に生息する個体数の3%程度が毎年チンパンジーによって捕食されている、2.この割合はアカコロブス個体群の人口増加率を上回るものではなく、アカコロブスがチンパンジー狩猟によって個体数を減らしている可能性は少ない、3.ブッシュバックの個体数の10%前後が毎年チンパンジーに捕食されていると推定され、捕食されている種の中では最も高い割合を示した、4.これら以外の種では、チンパンジーによって捕食されている個体数の割合は1〜2%かそれ以下で、チンパンジー狩猟がこれらの種の個体群に与える影響は小さいといった結論が得られた。この内容をドイツのマックスプランク研究所のBoesch教授と京都大学の上原教授との共著論文としてまとめ専門書に寄稿した。また1999年度にウガンダ共和国カリンズ森林で行った現地調査の際に得られた資料を分析し、1,カリンズではこれまでアカオザルとブルーモンキーがチンパンジーに捕食されている証拠が得られていたが、それ以外にアビシニアコロブスもチンパンジーに狩猟されている可能性が高いこと、2.カリンズのチンパンジーの狩猟方法は、コートジボアールのタイ森林のチンパンジーの方法よりもタンザニアのマハレやゴンベのチンパンジーの方法との共通性が高いことが明らかになった。これらの成果は来年度以降の学会で発表するとともに、その後専門誌に論文として投稿する予定である。
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