1999年度にウガンダ共和国カリンズ森林で行った現地調査の際に得られたチンパンジーによるアビシニアコロブスに対する狩猟の試みの事例を分析した。その結果、1.カリンズではこれまでアカオザルとブルーモンキーがチンパンジーに捕食されている証拠が得られていたが、それ以外にアビシニアコロブスもチンパンジーに狩猟されている可能性が高いこと、2・カリンズのチンパンジーの狩猟方法は、コートジボアールのタイ森林のチンパンジーの方法よりもタンザニアのマハレやゴンベのチンパンジーの方法との共通性が高いこと、3.アビシニアコロブスはグループサイズを小さくしたり、おとな雄が警戒音を鳴かないなど、捕食者(チンパンジー)に対して徹底した隠伏戦略を取っていることが明らかになった。この成果をPan African Newsに投稿し、掲載された。また1995年度以来調査を行ってきた、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園のチンパンジーの狩猟・肉食行動について、彼らが食物の競合相手を積極的に排除するために狩猟しているのではないかという仮説を検証するために、チンパンジーと彼らの主要な狩猟対象であるアカコロブスとの間の食物重複についての資料の分析を行った。その結果、チンパンジーとアカコロブスの間の食物重複は大きくないことが明らかになり、現時点ではこの仮説を積極的に支持する証拠は得られなかった。この成果を第17回日本霊長類学会で発表した。現在、この成果を専門誌に論文として投稿すべく準備を行っている。
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