研究概要 |
・サンゴ礁生態系、マングローブ生態系や干潟生態系に強く依存している海辺社会や山村社会で展開される様々な生業維持活動の中で採捕活動に焦点を当てて現地調査研究を行ってきた。特に礁原、汽水域・河口部や干潟における水族資源の伝統的な採捕技術・資源利用・維持・管理や干拓と、山間部の採集活動等にみられる季節性を重視した基礎的データを収集し、人類学的応用を試みた。 ・海と陸を同時に兼ね備えた礁原、汽水域・河口部、マングローブ域や干潟は,いわば半陸半海の生態系として人類が、長い間、さまざまな水族資源を採捕・確保する上で重要な「海の畑」だった。大した技術を労しないで,女性,子供,老人たちがごく日常的に関わり合ってきた場は、一日の潮の干満を利用するだけで採捕が周年可能であったし、その多様性・豊饒性・自給自足性は、古くから人類の食物獲得戦略に重要な要素と捉えるべきである。 ・多種多様な生物相を育くむ生態系の中で、熱帯・亜熱帯などの相違する自然環境で展開される伝統的なヒトの生計維持機構と採捕にかかわる種々の風物誌は、様々な生物種の生物的季節変化に規定されることが多く人類が獲得した伝統的な文化である。その相関性にかかわる詳細な資料・データの集積とその緻密な分析は、生物季節がもつ人類学的意義を検討・考察を加えていくうえで不可欠な作業である。 ・狩猟採集経済から、新石器革命といわれる食物生産経済にいたる人類進化史的な過程を復元・考察するさいに現代文明から希薄になりつつある伝統的な採捕技術とその生物季節的変化に注目し、人類学的な応用を試みる視座は重要である。さらにその伝統性の固有性・変異性・地方性も取り込んだ総合的な記録と分析は、現在、とりまとめているが、その成果は地球に優しい生態系の保全に必要な基礎資料を提供するばかりか、緊急かつ不可欠な学際的研究課題でもあるといえよう。
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