研究概要 |
眼球運動による定位反応反応時間は約200msecといわれている。しかし、刺激の条件では、100msec以上も短縮される(Suzuki & Hirai, Neurosci Res 2000)。この値は通常では機能していない別の神経回路をの関与を考えなければならない。なぜ生存にとって都合の良い早い応答が通常では覆い隠されているのか?本課題では、眼と頭の運動の解析を試み、両者の協調性と、生態的な意義を明らかにしたかった。第一の実験では、視標が点灯する前に注視している光を赤から緑に変え被験者の運動準備状況を変えさせることで、90ms潜時が早くなった。次に随意運動時に別々に動かせる眼と頭が、反射的な視線移動時は協調して機能している。反射的時には頭と眼が別々に指令を受け両者の統合が視線を動かしているのか、視線そのものへの指令が起きているのかを提示した視標とは反対方向に視線を向けるよう被験者に指示し、時々光方向へ視線が向いてしまう誤試行のときの応答から解析した。この時のエラーは、眼と頭が別々に応答することがあり、ヒトでは眼と頭が反射時でも別々に指令を受けていることが明らかになった。実生活のなかでヒト以外の動物が眼と頭を乖離して運動を起こすことは稀である。すると、ヒトでの目と頭の運動は他の動物とは異なった制御により行われているのだろうか。そのような発想から第三番目の実験、すなわちネコ、サル、ヒトでの対比を行ってみた。これにより、眼と頭の協調はネコで強く、次にサルそしてヒトとなった。最後は、眼の反応時間が上視野へは下視野への動きに比べ早いことが報告されこの意義が、生態との関係でのべられてきていたことに対する実験である。斜めの右下視野への動きは上方向に比べても早い潜時となり、生態学的な解釈だけではなく、神経学的な要素を考えに入れ、機能的意義を考えに入れなければならないことを示唆している。
|