平成12年度は、鹿児島県・屋久島の野生ニホンザル個体群について人口学的資料の収集を目的に、夏季に現地調査をおこなった。京都府嵐山のニホンザル餌付け群については、長期の配偶行動の資料をもとに、1〜3親等の母系的血縁者間で近親交配が回避されることなどを論文にまとめ、学術雑誌に投稿中である。また、同じ資料について、長期にわたる配偶者選択の変化を分析中である。チンパンジーでは、東アフリカのタンザニア・マハレ山塊国立公園の野生集団での資料をもとに、雌の発情のタイミングが同調するかどうかを、雌の配偶者競争の視点から分析中である。ワオキツネザルについては、マダガスカル・ベレンティ保護区での資料をもとに、10年間にわたる繁殖パラメーターの変化についての論文を共同執筆して、学術雑誌に掲載された。さらに、ワオキツネザルの出産について、他の昼行性の霊長類と異なり、日中に出産するケースが少なくないことから、ワオキツネザルが昼行性に進化したのは比較的近年ではないかとする論文を作成して、現在学術雑誌に投稿中である。現在は、出産直後に見られた敵対的交渉から、ワオキツネザル集団内の雌の競争について分析を進めている。また、ワオキツネザルの集団サイズと出産率・幼児死亡率等の繁殖パラメーターの相関について、これまでに社会生物学/行動生態学から提出された母系的社会構造での雌の競争に関する仮説と合致するかどうか、分析をすすめているところである。
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