平成13年度は前年度に引き続いて、京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル共和国ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群を対象とするフィールド調査で得られた資料をもとに、主として集団内の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。 具体的な成果として、(1)ニホンザルの配偶者選択の長期的な分析を通して、母系的血縁者間の配偶行動(近親交配)に関する学術論文を作成・投稿して、英文学術雑誌に印刷中である。(2)ワオキツネザル個体群では昼間に出産する雌が多いが、この原因を推測するとともに、これらの出産で起きる雌間の攻撃行動について分析した。この結果をもとに英語論文を作成して、学術雑誌に投稿・印刷済みである。(3)ワオキツネザル個体群の個体群動態を分析した結果、群れサイズと出産率等の関係について、集団間と集団内の競争のバランスシートを重視するWrangham(1980)の仮説に合致することがあきらかになった。これらの結果については論文を作成中で、学術雑誌で公表する予定である。(4)ワオキツネザルの群れの雌間関係を、近接と相互交渉によって解析するとともに、群れサイズと繁殖成功の相関から、群れのサイズによる雌の競争のあり方について分析をすすめながら、論文を作成中である。(5)チンパンジーの雌の発情周期を分析して、雌たちはランダムに発情/排卵しているのではなく、互いに排卵のタイミングをずらしている可能性があきらかになった。この結果をメスの競争の視点から分析して、現在、論文を作成中である。
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