研究概要 |
平成15年度も前年度に引き続き、京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル共和国ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群等でのフィールド調査で得られた資料をもとに、霊長類の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。 具体的な成果として、(1)屋久島のヤクスギ林帯におけるニホンザルの個体群調査の方法論について論文を作成して、American Journal of Primatology誌において発表した。(2)野生ワオキツネ個体群について、母系的社会構造で雌が経験する二重の競争関係(集団内の優劣関係、ならびに集団間の競争)について分析をすすめ、現在、論文を投稿中である。(3)同じく、ワオキツネザル個体群を対象に、雌雄の優劣関係の長期的変遷について分析を進めている。ワオキツネザルでは、(1)直線的な順位関係が存在するが,(2)個体の順位はしばしば変動する。(3)娘は必ずしも母親の直下に順位付けされない。また、(4)雌は雄に対して優位を占めるなど、オナガザルの母系集団の順位関係と異なる現象が認められる。これらの傾向について長期的な資料をベースに分析しながら、霊長類の雌における共存のシステムの進化について論文を作成中である。さらに繁殖成功との相関も分析が進行中で、順次論文等で公表する予定である。また、(4)チンパンジーの雌の発情の同調について、メスの競争の視点から分析を続け、現在、論文を作成中である。
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