京都市嵐山のニホンザル餌付け群、鹿児島県屋久島のニホンザル野生群、タンザニア・マハレ山塊国立公園のチンパンジー個体群、マダガスカル・ベレンテイ保護区のワオキツネザル個体群等でのフィールド調査で得られた資料をもとに、霊長類の雌の競争と共存のメカニズムについての研究を進めた。主要な成果として、(1)嵐山のニホンザルの長期データにもとづいて、母系的近親者間での配偶行動の回避が一般的であることを明らかにして英文学術論文として公表した。(2)屋久島の野生ニホンザル個体群について、海岸域の高密度で生息する群れ間でのエンカウンターについて英文論文1編を公刊した。(3)屋久島のヤクスギ林帯での群れ密度の調査法を確立して、英文論文1編を公刊した。(4)野生ワオキツネザルについて、1989年の調査開始から10年以上に及ぶ長期観察データにもとづいて、個体群動態ならびにメスの繁殖パラメーターを分析して、英文論文2編を公刊した。(5)また、ワオキツネザルの母系的社会構造において、雌が経験する二重の競争関係(集団内ならびに集団間の競争)について分析を進めた。出産時の行動をテーマに英文論文1編を公刊した他、群間と群内の競争のバランスシートについての英文論文1編を投稿中である。(6)同じく、ワオキツネザル個体群を対象に、雌雄の優劣関係の長期的変遷について分析を進めており、現在、論文を作成中である。さらに、(7)チンパンジーの雌が発情を同調させているかどうかについて、メスの競争の視点から分析を続け、現在、論文を作成中である。
|