初年度は、GaN障壁中の六角柱型のIn_<0.2>Ga_<0.8>N量子ドットの電子構造を、ピエゾ分極電界を考慮したsp^3強結合法を用いて計算し、量子閉じ込めシュタルク効果による遷移エネルギーの低下と、電子と正孔の空間分離の様子を理論的に求めた。次年度は、六角ピラミッド型のIn_<0.2>Ga_<0.8>N量子ドット中に電子-正孔対が存在する場合の、分極電界の遮蔽の効果と電子構造への影響を理論計算により検討した。計算は、GaN障壁中のIn_<0.2>Ga_<0.8>N量子ドットにおいて、i)歪みの計算(Valence-Force-Field法)、ii)分極電荷と分極ポテンシャルの計算(有限差分法)、iii)電子状態の計算(sp^3強結合法)、の手順で行なった。InGaN不規則混晶中のIn原子の分布は乱数発生により定めている。底部直径86.4Å、高さ20.8Å、斜面の傾き角30°の量子ドットにおいて、ドット頂上から底部に向かう最大で1.64MV/cmのピエゾ電界が形成され、遷移エネルギーは2.806eV(分極なし)から2.706eV(分極あり)に低下する。さらに、このドット内の電子-正孔対によるポテンシャル分布を計算した。(非自己無撞着解)ポテンシャル勾配はピエゾ電界を打ち消す方向だが、この大きさのドットでは、分極電荷総量が12.7eと大きいため遮蔽効果は弱い。内挿より、電子-正孔対が2個程度で明確な遮蔽効果が起きるためには、30Å程度のドット径が必要と考えられる。また、同様の方法を用いて、AIN中のGaN量子ドットの分極電界と電子状態の計算も行ない実験結果とのおおよその一致を得ている。
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